本研究の目的は、世界のいくつかの都市における鳥類群集を、文献・フィールド調査により収集し、都市に進出している鳥はどのような性質をもっているのか、さらに、都市の鳥類の種組成にはどのような特徴があるのかを明らかにすることである。この研究の背景には、群集生態学における古くからの疑問である群集の集合法則(どのような種の組み合わせで生物群集ができているのか)を明らかにするという基礎科学的側面と、都市における自然環境の保全という応用的な側面の両方がある。 昨年度と継続して、都市の鳥類群集の形成において種間競争が効くのか、中立説が成り立つのかといった結果を論文にして投稿中(または再投稿作業中)である。 加えて、今年度は、都市の鳥類の群集の形成を考える上で基礎となる、都市の鳥類個体数を把握することを目的とした研究も行った。具体的には、日本における都市島の代表格であるスズメの個体数の推定を行った(これは、「日本にスズメはどれくらいいるのか?」、というごくごく単純な疑問に答えるためでもある)。その結果は、荒い推定値ではあるが日本に約1800万羽いると推定された。さらに、都市の鳥類群集が実はかなり不安定である可能性を確かめるために、日本においてここ数十年でスズメがどれくらい減っているのかを文献情報により確かめた(こちらも、「スズメは減っているのか?」という基礎的な疑問に答えるためでもある)。その結果、1990年ごろから、少なく見積もっても50%、多く見積もると80%も減少していることが推定された。
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