本年度は、昨年度までに改良を試みた計量的多次元展開法(MDU)の新たな解法について、詳細な評価を行い、本解法の優位性を確認した。 計量的多次元展開法は、多変量データの有する傾向を空間布置で表せるため、簡易に理解可能であり、マーケティング現場などで非常に有用だが、アルゴリズムに厳しい制約があり、計算が破綻することが多く実用化されていない。そこで本研究では、データを線形変換することで制約を緩和し、布置の変換を段階的に行い、段階ごとに最小2乗解を得ることで、解析的に算出する新たな解法を報告し、従来解法では解が得られないデータでも、本解法では完全に解が得られることが確認している。 今年度は、詳細評価を行うことで、本解法では、多様なサイズの行列データについて、誤差を含んでいても、変数の数が10以上あれば信頼性の高い解が得られることが確認できた。また、現在、独自プログラム以外でMDUの計算を行う場合、SAS proc MDS(SASInc)が代表的に利用される。そこで、本解法の優位牲の検証のため、最も流通している商用プログラムであるproc MDSと本解法を比較した。その結果、本解法>本解法から得られた初期値等の情報をproc MDSに与えて計算した条件>>proc MDSのみを用いて計算した条件の順に適切な解が得られ、本解法から得られた初期値のみを適用するだけでも、proc MDSを大幅に改善する結果が得られた。proc MDSでは多次元尺度法(MDS)のアルゴリズムが用られており、大部分が欠損したデータから計算されてしまうため、解が退化しやすく、初期値の重要性が高いことが大きな原因であると考えている。 21年度は、本解法の拡張(重みつきモデルへの拡張、潜在クラスを用いた拡張等)や、実データを用いて、多変量データの図示化に用いられる従来の多変量解析の他手法(因子分析、コレスポンデンス分析、MDS等)との分析結果の比較を行うことで、より実用性を高めることを検討している。
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