本年度は、昨年度までに改良を試みた計量的多次元展開法(MDU)の新たな解法について、より詳細な分析に対応させるために重みつき距離モデルへの拡張を試みた。 計量的多次元展開法は、多変量データの有する傾向を空間布置で表せるため、簡易に理解可能であり、マーケティング現場などで非常に有用だが、アルゴリズムに厳しい制約があり、計算が破綻することが多く実用化されていない。今までに本研究では、データを線形変換することで制約を緩和し、布置の変換を段階的に行い、段階ごとに最小二乗解を得ることで、解析的に算出する新たな解法を報告し、従来解法では解が得られないデータでも、本解法では完全に解が得られることを確認している。 本年度は、各変数に対する評定値の重みの差を組み込んだ、重みつき距離モデルへの拡張を行った。重みなしのモデルと同様、最終的に、PREFMAPを用いてデータ行列の列の構造を求めるわけだが、重みつき距離モデルの計算過程で生じる同時対角化問題に対応するためにINDSCAL/SUMSCALを組み込んだアルゴリズムを構築した。シミュレーションデータを用いた解析結果より、重みなしのモデルと同様、誤差を含んだデータ行列でも、変数が20程度あれば、精度の良い解が得られることが確認された。 今後は、潜在クラスを用いた拡張、実データを用いた多変量データの図示化に用いられる従来の多変量解析の他手法(因子分析、コレスポンデンス分析、MDS等)との分析結果の比較を行うことで、より実用性を高めることを検討している。
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