研究概要 |
各種白血病細胞株からDNAを抽出しレセプター型チロシンキナーゼファミリーに属するFLT3の遺伝子異常をPCRで解析した。FLT3に遺伝子異常を有するMV4-11やMOLM13細胞、MEK/ERKシグナルが恒常的に活性化しているHL60、NB4細胞について、チロシンキナーゼの下流の生存刺激シグナルSTAT5,Akt/mTORやMEK/ERKシグナルが活性化していることをフローサイトメトリーで明らかにした。これらの白血病細胞はヒストン脱アセチル化酵素阻害剤と既存の抗癌剤や下流シグナル阻害剤(MEK阻害剤、mTOR阻害剤)との併用により、単剤に暴露されたときよりも更に効果的に細胞増殖が抑制されることをthymidine取り込み法、MTTアッセイやコロニーアッセイで明らかにした。また、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤や既存の抗癌剤(5-Aza-2'-deoxycytidine、シタラビン)に暴露すると、これらの細胞は細胞周期のG0/G1期に集積し、その後アポトーシスが誘導されることをPI染色やannexin V染色により明らかにし、これらの薬剤とMEK阻害剤とを併用することによって、相乗的に細胞増殖抑制やアポトーシス誘導能が高められることを明らかにした。更に、併用によって細胞周期を負に制御しているサイクリン依存的キナーゼ抑制因子p21^<waf1>蛋白質発現が相乗的に増強し、この蛋白質が直接アポトーシス誘導と関わりがあることを、small interfering RNAを用いてp21^<waf1>蛋白発現をノックダウンさせることによって明らかにした。また興味深いことに、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤とmTOR阻害剤を併用すると、アポトーシスではなく分化が相乗的に増強され、このとき、分化関連核内転写因子であるC/EBPεのプロモーター領域におけるヒストンのアセチル化が増強しこの転写因子の発現が亢進することを明らかにした。このように、各種薬剤の組み合わせによる細胞増殖抑制効果のメカニズムについて細胞株を用いて検証している。今後研究を拡大し、どのような症例にどのような薬剤を使用すればより効果的に細胞死を誘導可能か検証していく。
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