近年、タンパク質や細胞の機能制御に関与するペプチドや低分子化合物の探索が進められている。タンパク質間の相互作用はタンパク質内のエピトープ部位を介して行われているため、目的分子を認識し生体内での反応を模倣できるような機能性分子の創成が可能であると考えられている。特にシグナル伝達などに関与するリガンドや細胞膜受容体と相互作用する機能性ペプチドは細胞制御に関与することから生体反応を模倣することのできる分子として注目を集めている。本研究はペプチドアレイを用いた実験とFuzzy Neural Networkを用いた情報処理解析技術を組み合わせた、新規ペプチドデザイン手法の開発(Peptide Informatics)、間葉系幹細胞(MSC)接着ペプチドのデザイン、新規スキャフォールドの開発を目的としたものである。MSCは骨髄中に僅かに存在する未分化な細胞で自己増殖能はもちろん、骨芽細胞や脂肪細胞など様々な細胞に分化することが知られており、効率よく増殖・分化が可能な培養スキャホールドを開発することで組織工学における有効な細胞の供給源になり、組織工学の発展に大きく貢献できるものと考えられる。 本年度は昨年度の研究成果(Peptide Informaticsの開発、接着ペプチドのデザイン)を基にMSCの接着形態を制御することが可能な培養スキャフォールドの開発を試みた。2種類のペプチドを様々な組み合わせ・濃度で培養基盤上に結合させ、個々の細胞形態の観察及び解析を行ったところ、ペプチドの組み合わせ効果を確認することに成功した。MSCは細胞接着時の形態がその後の分化に大きく関与することが知られており、本研究成果は分化誘導スキャフォールドの開発に近づく研究成果であると考えられる。
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