研究概要 |
本研究は一次元ハロゲン架橋複核金属錯体(MMX-Chain)を架橋配位子によって繋ぐことで新規MMX-ladder錯体を構築し、その物性を明らかにすることが目標である。1年目となる本年度はMMX-ladder錯体の基本構造となる白金ダイマー同士を繋いだ4核錯体の合成法を確立することを第一の目標としていたが、原料となるいくつかの白金2核(ダイマー)ユニットの合成には至っているものの、架橋配位子を用いた4核錯体の合成に現在のところ至ってはいない。複数の配位子を用いた合成を検討したものの、白金の2核ユニットの分解を抑制し、4核錯体を生成させることが大きな課題となっている。今年度は新しい原料2核白金錯体の検討を行い、また温度等の反応条件を再検討する予定である。 今年度は、もう一つの目的として近年2本鎖ladder錯体の合成例のある、一次元ハロゲン架橋金属錯体(MX-Chain)の鎖の本数を制御することによる系統的な物性評価を目的として、3本鎖、4本鎖MX-ladder型白金錯体の合成を行った。昨年度は白金の四角形錯体を基盤としたヨウ素架橋4本鎖型MX-ladder錯体[Pt(en)(bpy)I]_4(NO_3)_8(en:ethylenediamine,bpy:4,4-bpyridyl)の合成に成功し、X線結晶構造解析の結果、この錯体は四角柱型の特異なチューブ構造を有している事が明らかとなった。今年度はこの4本鎖チューブ錯体か様々なゲスト分子に対して吸着能を示す事を明らかにし、また放射光を用いた散漫散乱解析、理論計算の両面から、4本鎖間の電荷配列について検討を行った。これらの結果は多くの国内学会にて発表し、現在論文執筆中である。また、新規な白金三角形錯体を基盤とした臭素架橋3本鎖型MX-ladder錯体の合成・および構造解析に成功した。この錯体は世界的に例をみないキラルな3重らせん型の構造を有していることが明らかとなり、極めてインパクトの大きい結果であると考えている。現在、この結果についても論文執筆中である。
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