概日リズムは光や温度などの外部刺激を振動体に伝える入力系、自発的に24時間のリズムを刻む振動体、振動体で生み出されたリズムを末梢へと伝達する出力系の三つのコンポーネントから構成されるが、昆虫概日時計において、光情報を概日時計中枢へ伝達されるような神経ペプチドは現在まで発見されていない。昆虫概日時計において入力系で働く神経ペプチドを発見することは、昆虫とホ乳類の概日時計機構を対比する上で重要である。本研究の目的は、当研究室で発見された新規神経ペプチドであるPDFアイソフォームとシウジョウバエゲノムから発見されたNMSオルソログが昆虫概日時計において、入力系で機能するペプチドであること証明することである。 本年度は、PDFアイソフォームを特異的に認識するモノクローナル抗体の作製を行なった。昨年度の単離の試みからPDFアイソフォームは6位と16位のアスパラギンからアスパラギン酸への置換体である可能性が高いと考えられる。そこで、このアミノ酸置換を特異的に認識するモノクローナル抗体の細胞融合法による作製、およびそのキャラクタライズを行い、16位のアスパラギン酸への置換を特異的に認識するモノクローナル抗体の作製に成功した。また、アイソフォーム特異的に認識するポリクローナル抗体の作製も行なっている。 また、ニューロメジンSオルソログについては、その候補となる配列をESTデータベースより検索し、ゲノムから発見した8種の他にも複数の候補配列を見いだした。現在、それぞれについてプライマーを設計し、cDNAクローニングを行なっている。
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