伊豆諸島御蔵島にて、ミナミハンドウイルカのオトナメスが、死児を運搬されている様子を観察・撮影した。このメスは死児を運搬しつつも、1歳児を同伴していた。また、運搬している個体の周囲を十数頭のオスが取り巻いており、音声や泡が通常時に比べて多く記録された。運搬個体は死児を海底に置いて、取巻個体のうちの1個体に噛みつき、また死児を拾い上げて運搬していった。これらの観察から、死児を運搬したのは母親ではない可能性、取巻個体が通常とは異なる状態を認知していた可能性、運搬個体は取巻個体と敵対的な関係にあった可能性が考えられた。ミナミハンドウイルカにおいて、母親以外の個体によるサポートや、オスによる仔殺しが存在する可能性が示唆された。 飼育イロワケイルカの母子2組を観察し、接触行動の発達の分析をした。母子間の身体的接触は次第に減少すること、生後直後は体と体の接触の割合が多いが、時間的経過とともに胸ビレと体の接触の割合が多くなること、また、年長のコドモの方から年少のコドモや母親以外の個体に接近する頻度が増えることを明らかにした。 揚子江スナメリ6個体から得られた遊泳速度・深度・加速度の情報から、水底での採餌行動、呼吸行動、活発/非活発な時間帯、同調遊泳の抽出を試みた。その結果、スナメリば水深約5mで採餌すること、採餌や非活発な時間帯は日和見的であること、オトナオスとワカオスが有意に多く同調遊泳を行っている可能性を示した。 アフリカ大陸南東岸沿岸に生息するコシャチイルカを対象に、群れメンバーの流動性と社会行動の観察を行った。頻繁に群れサイズが変化すること、ラビング(胸ビレで相手をこする行動)、複数個体による同調ジャンプ、追いかけあいなど、様々な社会行動を行うことを明らかにした。また、動物搭載型記録計の取り付けを試みた際のイルカへの影響評価を行い、イルカは異常な反応を見せないことを示した。
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