本研究の目的は、膜タンパク質の機能解析のために、マイクロ・ナノ加工技術を用いることにより、これまで実現の不可能であった直径の揃ったジャイアントリポソームを効率的に作製し、操作するマイクロ流体デバイスを実現することである。そこで、本年度は、主に下記の2項目について研究を行ってきた。 (1)パリレン樹脂の微細加工技術を用いてリン脂質膜をパターンニングし、均一サイズのリボソームを作製する方法を提案し、さらに、一枚膜構造を持つジャイアントリポソームを作製することができるエレクトロフォーメーション法に着目した。次に、作製されたジャイアントリポソーム内の溶液交換を行うことができるデバイスの作製を試みた。実験の結果、異なるサイズ(20μm×20μmと50μm×50μm)のリン脂質のパターンから作製されたリボソームの径は、パタ「ンサイズに依存して変化することが分かってきた.サイズの変動係数は、11%であり、リン脂質のパターンニングとエレクトロフォーメーション法を利用することで、より径の揃ったジャイアントリポソームを作製することができた.さらに、パリレンシートの微小な穴の上に、同様にリボソームを作製することができ、リボソーム内の溶液を小穴を通して行うことができた。 (2)異なる種類のジャイアントリポソームを効率よく作製し、操作(輸送、回収)することができるマイクロ流路デバイスとリボソームを選択的に固定することができるマイクロデバイスを提案した.実験の結果、マイクロ流路デバイスを用いることにより、異なる種類のジャイアントリポソームを同一基板上の流路内に作製し、流れを利用しリボソームを回収することができた。また、同一基板上に異なる種類のジャイアントリポソームを選択的に固定することができた。
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