研究概要 |
21世紀の今日,持続可能な循環型社会の構築に向けてバイオマスを有効に利用した研究・技術開発の確立が強く求められており,バイオマスの機械・構造材料化に向けた取り組みが重視されている.中でも,天然繊維や生分解性プラスチックを石油由来材料に置き換えた環境調和複合材料に関する研究技術開発は,機械・構造材料系分野で大きな注目を浴びるようになってきた.そこで,本研究では高強度天然繊維を使ったテキスタイル・コンポジットの新しい機能発現性を見出すことを目指し,この材料の塑性加工性を調査した.まず,複合材料の強化形態として効果的な連続繊維を用い,その形状を保った成形加工が可能かどうかを調べるために,天然繊維自体の高温変形能を明らかにした.次に,テキスタイル・コンポジットの高温下引張試験により塑性加工性を評価した.評価する際,塑性加工性評価尺度として異方性を考慮した積層板の単軸引張試験におけるランクフォードのr値を複合材料へ適用することをこころみた.また,天然繊維に延性を付与することができるアルカリ処理を平織布に施し,同様に塑性加工性を評価した.次に,高温炉でテキスタイル・コンポジット板材をあらかじめ調査しておいた適温まで加熱し,円筒・角筒深絞成形加工実験を実施した.さらに,成形品の劣化度の評価を行うため,115℃において高温曝露引張試験を行った.これらの結果,115℃ではテキスタイル・コンポジットの塑性変形が大きく生じ,高温曝露後も劣化が起こらないことから,塑性加工の適正温度であるといえ,30mmまでの円筒・角筒深絞成形加工を行うことが可能である.
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