これまでの研究において、新規摂食制御ペプチドとしてニューロメジンU(NMU)をコードする4種類のcDNAを単離した。これら4種類のmRNAからは、構成アミノ酸数の異なる3分子種のペプチド(構成アミノ酸数により、それぞれNMU-21、NMU-25及びNMU-38と命名した)が産生されることが推定された。また、NMU受容体をコードするcDNAのクローニングを行ったところ、2種類のcDNAを得た。そこで、推定されるキンギョNMU受容体を安定発現する培養細胞を作製し、受容体発現細胞の細胞内Ca^<2+>濃度の変化を指標としたアッセイにより脳及び腸より天然のNMUの単離・精製を行った。その結果、9残基のアミノ酸から構成されるNMU・9を新たに発見した。そこで、これら4分子種のキンギョNMUを合成し、その生理活性を調べた。キンギョNMU受容体発現細胞に合成したNMUを添加したところ、いずれの分子種も細胞内Ca^<2+>濃度の上昇を誘起した。次に、NMUの脳室内投与が摂食量に及ぼす影響を調べたところ、いずれの分子種を投与しても給餌後60分間の摂食量が投与量依存的に減少することが示された。また、NMU投与による摂食抑制作用はCRHを介している可能性が示唆された。さらに、4分子種のNMUは、キンギョ腸平滑筋の収縮を誘起することが見出された。 上記の結果より、本研究は魚類においてNMUとその受容体が存在していることを初めて見出し、分子基盤を明らかにした。さらに、NMUはキンギョの中枢および末梢において、生理作用を有することを示した。特に、哺乳類及び鳥類においてもNMUは摂食抑制作用を有し、その作用はCRHにより仲介されることが報告されている。従って、NMU-CRH系による摂食抑制機序は脊椎動物において保存されていることが、本研究の成果より示唆される。
|