研究概要 |
本年度はクルマエビにおけるToll receptor遺伝子の分離を中心に研究を行った。まず、既知のToll receptor遺伝子より縮重プライマーを設計し、クルマエビのリンパ様器官より合成したcDNAを鋳型としてPCRを行い、さらに全長を解析した。得られたクルマエビのToll receptor (Mj Toll)遺伝子のORFは3,027塩基であり、1,008残基のアミノ酸をコードしていた。MITol1遺伝子には、LRR、膜貫通領域およびTIR domainが確認された。MjToll遺伝子のアミノ酸配列とバナメイエビ,ヨーロッパミツバチおよびキイロショウジョウバエのToll proteinとの相同性は、45,32,30%であった。また、血球,リンパ様器官,腸管,神経,心臓および鯉でMjToll遺伝子の発現が認められた。ゲノム構造解析の結果、MjToll遺伝子は4つのエクソンと3つのイントロンより構成され、サイズは3,691塩基であった。さらに、これまでに報告されているバナメイエビおよびウシエビのToll receptor遺伝子よりプライマーを設計し、クルマエビのcDNAを鋳型としPCRを行った。シークエンス解析より、PCR産物はToll receptor遺伝子であることが確認された。得られたクルマエビのToll receptor 2(MjToll2)遺伝子のORFは2,796塩基であり、931残基のアミノ酸をコードしていることが確認された。また、MjToll2遺伝子には、LRR、膜貫通領域およびTIR domainが確認された。MjToll2遺伝子のゲノム構造解析を行なった結果、MjToll2遺伝子は5つのエクソンと4つのイントロンより構成され、ゲノム上でのサイズは3,147塩基であった。また、MjToll2のアミノ酸配列とバナメイエビのToll receptor遺伝子とは82.5%の相同性を示した。この結果より、すでに分離を行ったMjToll遺伝子はエビ類における新しいクラスのToll receptor遺伝子であり、MjToll2遺伝子はバナメイエビで分離されているToll receptor遺伝子と非常に類似したクラス、もしくは同一のクラスである可能性が示唆された。エビ類の免疫機構が解明されることで、これまで養殖現場で使用されてきた免疫賦活剤の有効性の評価が遺伝子レベルで可能になり、生体防御能を把握することが可能になると考えられる。
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