研究概要 |
一軸方向に配向した分子薄膜を有機光電変換デバイスに組み込むことによって、効率的に直線偏光を検出することができる。ラビング法によって形成される3,4,9,10-perylene tetra carboxylic-bis-benzimidazole(PTCBI)配向薄膜は、400nmから750nmの可視光領域において3-5の吸収二色比を有しかつ高い光電変換特性を有することから、偏光検出型フォトセンサに適した材料であることを示してきた。本年度は、PTCBI薄膜における配向度の向上を目的とし、X線回折による分子配向構造の観察、配向メカニズムの解明を試みた。基板に蒸着したPTCBI薄膜(プリレイヤー)をラビングし、その上に超低速レートで再びPTCBIを真空蒸着することによって配向膜とすることができる。この配向薄膜は面間隔3.29Aに相当する2θ=27.1°に回折ピークを示したことから、PTCBI分子面が基板に対して平行、つまり分子が寝ている構造をとっていることがわかった。一方、ラビング処理を施さない薄膜では、面間隔7.18Aに相当する2θ=12.3°に回折ピークを示したことから、PTCBI分子面が基板に対して斜立した構造をとることがわかった。これらの結果から、斜立したPTCBI分子がラビングされることで基板上に寝転び、その上に低速蒸着されるPTCBI分子が誘導的に配向されることを明らかにした。また、ラビング方向と平行な直線偏光を入射した場合に最大吸収を示したことから、面内においては分子長軸が一方向に並んだ構造をとっていることを明らかにした。
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