本年度は、有機トランジスタの絶縁膜において分極に関する知見をより一層発展させ本研究の目的である有機電界効果トランジスタの型メモリーへの応用を展開している。本年度の研究において、絶縁膜の分極をコントロールすることが可能になったため、ここで培った知見を元に本年度はメモリーを試作したが、現在はメモリーの高性能化にむけてコントロールされた分極状態の保持を目指して研究を進めている。この分極状態の保持がメモリー特性改善へのキーテクニックとなる。分極した絶縁膜は時間と共に緩和し、素子のメモリー機能が劣化するため、緩和を防ぐ必要がある。その方法として、現在、絶縁膜の分子の構造に注目し、化学的に固定化させることで分極緩和を防ぐ、または遅らせることができるのではないかという指針に基づき素子設計や材料選択を行い、デバイスの作成を行っている。 また、今年度は精力的に学会発表や論文発表を行った。具体的には、国内外の学会において計13件の発表を行った。2009年3月にフランスのパリで開催された学会(2009International Thin Film Transistor Conference(ITC'09))では、本研究の発表に対しても盛んな議論を交わすことができ、有益なコメントを多数得ることができた。また、学会後、ヨーロッパにおいて有機エレクトロニクスの分野で非常に著名な研究室を複数訪問し、自身の研究成果を紹介し、ディスカッションを交わした。ここでは、本研究に対してとても興味を持たれ、発表中や発表後に盛んなディスカッションや質疑応答を交わした。さらに、最先端の研究を行っている研究室を訪問することで、有機エレクトロニクスに関する自分の知見が広がり、自分の研究の知識と合わせることで本研究により一層磨きをかけることができるような着想を得ることができた。
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