本年度はラビリンチュラにおけるDHA含有リン脂質の合成に関わると推定されるアシルトランスフェラーゼについてクローニングおよび発現解析を行った。本酵素はラビリンチュラにおけるDHA含有リン脂質の代謝経路を明らかにする上で、特に重要であると考えられるキーエンザイムの1つである。 ラビリンチュラより獲得したLPATF26(681アミノ酸残基)について、出芽酵母Saccharomyces cervisiaeによる発現解析を行った。活性の測定にはRI標識化合物を用いる系と、non-RI標識化合物を用いる系の2つの実験系を用いて行った。non-RI標識の実験系では、反応産物についてLC-MSを用いた解析を行った。その結果、どちらの系においてもDHA-CoAとlysoPCを基質とし、DHA含有PCを合成する活性が確認された。またLC-MSの解析により。DHAのみならずアラキドン酸も基質として利用することが明らかとなった。以上の結果は、獲得した本酵素がラビリンチュラにおいて、DHA含有リン脂質の合成に関わる酵素であることを強く示唆すると共に、その他の脂肪酸種を含むリン脂質の合成にも深く関与していることが予想されるものであった。 本研究成果はDHA含有リン脂質の合成経路の解明において非常に重要な発見であると考えられる。今後、ラビリンチュラを用いたノックアウト株や過剰発現株の作製により本酵素のより詳細な機能が明らかにされると考えている。
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