平成19年度は、大別して、前年度から継続する研究の仕上げ、資史料の収集、新しい論考の執筆という三つの分野で、研究・調査を実施した。第一に、前年度からの研究の完遂については、2本の論考が学術雑誌(『国際安全保障』『日本政治研究』)に掲載された。そのうちの1本は、学会(「日本政治研究学会」)での報告を経たものである。これらの業績により、60年代終盤から70年代初頭にかけて実施された米国の軍事プレゼンス縮小が、日本の政府当局者に強い懸念を抱かせ、いかにして米国を引き留めるかという観点から安全保障政策を立案させていたことが実証的に明らかとなり、日本政府が米国の軍事プレゼンスの縮小を歓迎し、それを積極的に促したという通説的解釈を修正することに成功した。第二に、資史料の収集については、約1ヵ月間、米国のThe National ArchivesとLyndon B. Johnson Libraryでの調査を行った。ここには、新発見の史料が多数含まれており、学界における知識の蓄積に貢献できた。日本の資史料に関しては、外務省への情報公開請求を行い、アメリカ局や調査部の文書を中心に、新資料の発掘に成功している。第三に、得られた資史料をもとに、新しい論文の執筆に取り掛かった。それは、「デタントと日米同盟」をテーマとして、これまで発表した論考の直後の時代における日米安全保障関係を検証するものである。中心的課題は、71年から72年にかけて誕生した米ソ、米中の「二重のデタント」という東アジアにおける新しい国際システムの成立が、米ソ、米中の対立を基調とする旧来の冷戦システムに起源をもつ日米同盟にいかなる影響を与えたのか、という問題を解明することにある。これが公刊されれば、従来、完全に研究史上の空白となってきた、デタントと日米同盟の関係が解明され、学界における知見の蓄積に大いに貢献できる。
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