光波制御技術の一つとして、無機結晶と比べ大きな分極率を持つ非線形光学有機分子を利用した光波制御デバイスの開発および応用研究が盛んに行われている。当研究室で行われている無水酸塩基反応を用いて作製した低温溶融性を有す有機修飾ケイリン酸塩系ハイブリッドガラスは、無機ガラスと比較して有機化合物とめ高い親和姓を持つ為、このような有機分子のホスト材料の一つとして考えられる。本研究では、非線形有機分子を高濃度に含有する有機修飾ハイブリッドガラスを波長変換素子や光導波デバイスへの応用することを目指し、無水酸塩基法により非線形光学有機分子をドープした材料の作製を行い、ドナー・アクセプター型非線形光学有機分子の溶解度を調べた。また、電界ポーリングを行いガラス中の有機分子の配向を試みた。 非線形有機分子を含有する有機修飾ケイリン酸塩系ガラス試料を作製した結果、ドナー・アクセプター型非線形光学有機分子をおよそ5mo1%まで含有したガラスを作製することができた。これは主鎖にリン酸塩基を含む為、分極率の大きいドナー・アクセプター型非線形光学有機分子の溶解度が高くなったと考えられる。次に、非線形有機分子を含有するガラス中の有機分子を配向させるために、厚み約200μmの薄膜を作製し、この試料に対して電界ポーリング処理を行った。電界ポーリングによる配向の効果はMaker fringe法による第二高調波発生強度測定により評価した。ポーリングの前後の第二高調波強度を比較すると、高角度側に色素の配向の結果出現したと考えられるフリンジが観測された。以上の結果から、非線形光学分子を高濃度に含有する有機修飾ケイリン酸塩系ハイブリッドガラスの作製に成功した。今回の実験は基礎的であるが、光を利用した微細構造形成と組み合わせることで波長変換素子や光導波デバイスへの応用が期待できる。
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