1、所属機関で決定した日本産いもち病菌の全ゲノム配列と既に公開されている外国産いもち病菌の全ゲノム配列を比較した。そして、日本産いもち病菌のみ保有するゲノム配列1.68Mbを推定し、353個の日本産いもち菌特異的分泌タンパク質遺伝子を予測した。イネの防御反応を誘導する非病原性遺伝子を特定するために、いもち病菌23菌株のイネ品種特異的な病原性・非病原性と、これらの菌株における分泌タンパク質遺伝子の保有状況との関連を調べた。その結果、2つの分泌タンパク質遺伝子の保有状況と、非病原性遺伝子AVR-PiaとAVR-Piiの非病原性の有無とが一致した。これらの遺伝子を含む断片を、保有しない菌株に導入した。そして、AVR-PiaとAVR-Piiをそれぞれ認識する抵抗性遺伝子PiaとPiiを保有するイネ品種ササニシキ・カケハシに、これらの形質転換いもち病菌をそれぞれ接種したところ、病斑の伸展が抑えられた。よって、2つの分泌タンパク質遺伝子は、AVR-PiaとAVR-Piiであることがわかった。 2、外国産いもち病菌の全ゲノム配列から1206個の分泌タンパク質遺伝子を予測し、いもち病菌48菌株におけるこれら遺伝子のDNA変異をEcoTILLING法によって調べた。EcoTILLING法は、迅速に安価に変異を検出することができる方法である。48菌株間で、分泌シグナル領域が保存されているにもかかわらず、その他の領域には非常に多くの変異が存在する遺伝子を発見した。この結果は、既知のエフェクター遺伝子の特徴と類似している。現在、この遺伝子の機能解析をすすめている。
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