研究課題
日本産いもち病菌Ina168菌株特異的領域1.68Mbから分泌タンパク質遺伝子316個を推定した。そして、表現型と遺伝子の有無と間の連関解析により非病原力遺伝子AVR-Pia、AVR-Pii、AVR-Pik/km/kpの候補遺伝子を選抜した。更に、いもち病菌形質転換体とイネ安定形質転換体を用いた実験、イネプロトプラストを用いた一過的発現実験によって、候補遺伝子が、AVR-Pia、AVR-Pii、AVR-Pik/km/kpであることを証明した。また、ゲノム解析により、イネいもち病菌の分泌タンパク質遺伝子は、DNA変異によるものより、遺伝子の獲得と喪失によって進化しているものが多いことを明らかにした。更に、獲得と喪失によって進化している分泌タンパク質遺伝子は、近傍にトランスポゾンが存在している傾向があることがわかった。これらの成果をまとめ、米国植物生理学会誌「The Plant Cell」に発表した。そして、これら3つの非病原力遺伝子は、喪失とDNA変異によって、いもち病菌が、抵抗性遺伝子Pia、Pii、Pik、Pik-m,Pik-pをそれぞれもつイネ品種の抵抗性反応を打破することを可能にしていることがわかった。将来、単離した非病原力遺伝子のイネ相互作用因子を同定することができれば、いもち病菌のイネ感染機構の詳細が明らかになると期待される。また、部位特異的変異導入実験により、AVR-PiiのCCHモチーフが細胞死誘導に重要であることをつきとめた。一方、AVR-Pik/km/kpは、少しのアミノ酸置換で細胞死を誘導する能力を失うことがわかった。すなわち、AVR-Pik/km/kp/は、最小のアミノ酸置換で宿主の抵抗性反応を打破できることを示唆している。
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The Plant Cell 21
ページ: 1573-1591