本研究はフラットパネルディスプレイなどの冷陰極電子源の開発を目的として、基板上に空間制御された垂直配向技術の構築及び電界放出特性の高効率化を目指し、電子ビームリソグラフィー装置を用い、最:小で100nmの触媒ドットアレイを作製し、プラズマCVD法により空間制御されたカーボンナノチューブを成長させ、その電界放出特性を評価した。このように作製したサンプルを電界放射型電子顕微鏡(FE-SEM)やTEMにより形状を観察した結果、直径100nm、長さが約5μmのカーボンナノチューブが触媒ドット上に均一に成長しているのを確認した。電界放出特性については、高密度に垂直配向成長したカーボンナノチューブ膜では、電子放出が生じるための閾値電圧は約300V(2.4V/μm)であるのに対し、100nmのドット配列カーボンナノチュープアレイにおいては閾値電圧が220V(1.7V/um)となり、特性の向上を確認した。さらに、エミッタの形状を高いアスペクト比を有する構造の場合では、閾値電圧は140V(1.1V/μm)となり、研究計画で掲げた2V/μm以下を達成した。 また、高密度にカーボンナノチューブが配置されると、電界放出において電界の遮蔽効果が生じてしまうため、カーボンナノチューブの配置を最適化する必要があるため、ドット間隔を変化させて電界電子放出特性との関係を調査した。この実験においては、ドットサイズが400nmとしドット間隔を0.3μmから10μmと変化させた基板を作製し、長さ3μmのカーボンナノチューブを成長させた。これらの電界放出特性を比較すると、間隔が6μmのサンプルにおいて最も低い閾値電圧140V(1.1V/μm)となることを確認した。このようにドット間隔を制御することによって、電界放出特性における最適化条件(長さ:間隔=1:2)を実験的に明らかにした。
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