本研究はフラットパネルディスプレイなどの冷陰極電子源の開発を目的として、電子ビームリソグラフィー装置を用い、基板上に空間制御されたカーボンナノチューブ(CNT)を成長させ、その電界放出特性を評価した。CNTを成長させる際に用いるNH_3/C_2H_2混合ガスの比と成長したCNTの形状と電界放出特性の関係を調査した。作製したサンプルを電界放射型顕微鏡(FE-SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した結果、C_2H_2比を10%から30%へと増加させるにつれ、その構造がチューブ状(15%以下)からコーン状(20%以上)へと変化する傾向が確認された。またCNTの長さは減少する傾向が確認された。これらの電界放出特性を比較すると、25%で成長したCNTでは、電子放出の生じる閾値電圧は240Vであるのに対し、15%で成長したCNTはで140Vとなり特性の向上を確認した。 また、CNTの電界放出特性はその先端構造に強く依存するため、そのCNTの形状との関係を調べるため、マイクロ波励起表面波プラズマ装置を用いてO_2プラズマをCNT電子源表面へ照射した。入射パワーを400Wとし、最大5分間のプラズマ照射を行った。電界放出特性を比較すると、2分照射したCNTでは閾値電圧は110V(0.88V/μm)、5分照射したCNTでは260V(2.1V/μm)となった。また、これらをTEMにより構造解析を行った結果、先端触媒が除去されており、その部分で局所的な電界集中効果が高まったことが電界放出特性の向上につながったと考えられる。このようにして、研究目的で掲げた1.0V/μm以下を達成できた。
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