昨年度、我々は片端入射の分布型歪センサとして、ブリルアン光相関領域リフレクトメトリ(BOCDR)を提案し、世界記録となる13mmという高い理論空間分解能を達成した。本年度は、(1)時間ゲート法による測定レンジの延伸、(2)電気スペアナの除去による高速化、(3)偏波ビート長の分布測定への応用、(4)偏波スクランブリングによる測定の安定性向上、(5)ノイズフロア補償によるS/N比の向上、(6)テルライトファイバにおける新物性の発見、を行った。(1):分解能と測定レンジがトレードオフであり、本質的な性能指標である両者の比は560程度が限界であった。そこで、ポンプ光と参照光をパルス化することで複数の相関ピークを利用できる技術を提案し、その比を1515程度まで向上させた。(2):従来のサンプリングレートは、電気スペアナ(ESA)の周波数掃引レート50Hzに制限されていた。そこで、光ヘテロダイン検波によりESAを含まない系を構成し、それを400Hzまで向上させた。(3):複屈折の局所的な情報である偏波ビート長の分布の測定法として、高分解能(<m)・長距離測定レンジ(〜km)・高速測定(〜s)・片端入射の4点を併せ持つ技術は知られていなかった。そこで、BOCDRで観測されるブリルアン利得スペクトラム(BGS)のピーク強度が複屈折の分布に従って変動することを利用し、これを実現した。(4):長いファイバに沿った分布測定を行うためには偏波コントローラを手動で最適化する必要があり、高速かつ安定な測定は困難であった。そこで、偏波状態を自動的に平均化する偏波スクランブリングの導入により、歪全長測定の安定化と高速化を実現した。(5):微弱なBGS信号はESAのノイズフロアに埋もれ、SN比を劣化させていた。そこで、ノイズフロアの補正により、SN比を向上させた。(6):テルライトファイバ中のブリルアン周波数シフト(BFS)の歪および温度依存性をBOCDRにより調査した。その結果、BFSが歪および温度に対して負の依存性を示すという新たな現象を発見した。
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