平成19年度、我々は片端入射の分布型歪センサとして、ブリルアン光相関領域リフレクトメトリ(BOCDR)を提案し、世界記録となる13mmという高空間分解能を達成した。平成20年度は、時間ゲート法による測定レンジの延伸や、偏波ビート長の分布測定への応用、偏波スクランブリングによる測定の安定性向上、などを行った。これに引き続き、平成21年度は、1、特殊ファイバにおけるブリルアン周波数シフト(BFS)の温度や歪に対する負の依存性の発見と理論解析、2、テルライトファイバを被測定ファイバ(FUT)として用いたBOCDRによる極限分解能の実現、3、二重周波数変調法による測定レンジの延伸、4、BOCDR動作の詳細な理論解明、を行った。1:一般のシリカファイバよりもブリルアン散乱が強いテルライトファイバおよび酸化ビスマスファイバ中の、BFSの温度および歪に対する依存性を調査した。その結果、シリカファイバとは逆符号の負の依存性を初観測した。この原因は、特殊ファイバのヤング率の歪や温度に対する負の依存性に起因していると考えている。2:従来得られていた13mmの分解能は、システムの信号対雑音(S/N)比に制限を受けていた。そこで、ブリルアン散乱信号の強いテルライトファイバをFUTとして用いることで、BOCDRの極限分解能である6mmの分解能を達成した。3:これまでに提案されていた時間ゲート法では、測定レンジを3倍程度までしか延伸することができなかった。そこで、光源の周波数を2つの周波数で同時に変調する二重周波数変調法を提案し、ノイズフロア補正技術と組み合わせることで、測定レンジを10倍に延伸することに成功した。4:BOCDR動作を既存技術とは独立に理論を構築した。観測される実効ブリルアン利得スペクトル(BGS)が真性BGS分布とビートスペクトルの2次元畳込み積分で与えられることを導き、これに基づいて実験とシミュレーションの比較を行った。また、各種ノイズの解析を行い、BOCDRの性能限界を明確にした。
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