研究概要 |
3次元フォトニック結晶により,3次元的に完全な発光の制御が可能になると期待される.これまでに,9層あるいは17層のフォトニック結晶において,発光の抑制および欠陥部での発光増強効果を示唆する結果が得られている.本年度は,これらの特性を理論的に明らかにするため,実験上重要となる結晶層数(周期数)の有限性と構造揺らぎの影響の解析を行った.また,理想的な3次元結晶を実現するため,自動位置合わせ積層装置の開発を行った. 1.実際の試料構造を想定し,有限のストライプ積層数であり積層位置の揺らぎがある場合について,3次元FDTD解析により発光抑制効果の検討を行った.この結果,積層数に応じて揺らぎの影響の現れ方が大きく異なることを見出した.これは,積層数が少ない揚合には積層方向のバンドギャップ効果が小さいことが制限要因であることに対して,層数を増大させた場合には積層方向のバンドギャップ効果が十分となり,揺らぎによって生じる光のモードの影響が顕在化するために生じる特性であることを明らかにした.また,その境界となるのは17層程度であることを示した. 2.点欠陥共振器構造における光閉じ込め効果(Q値)について揺らぎの影響を検討し,発光抑制効果と同様の議論が適用できることを明らかにした.この結果は,実験的に得られたフォトニック結晶共振器のQ値の積層数依存性とよい対応が得られた. 3.解析結果を踏まえて,ウエハ接合装置における位置合わせの自動化を行い,結晶構造作製時の揺らぎを低減した.具体的に,計算機を用いた画像パターン認識を用いるとともに,位置合わせ評価パターンの設計を工夫することで,位置合わせ誤差の計測精度として3σ〜10nmを得た.さらに,この計測結果を用いてピェゾステージを自動フィードバック駆動させるシステムを構築した結果,積層位置ずれ<30nmの再現性のよい精密ウエハ接合を得ることに成功した.
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