研究課題/領域番号 |
08041001
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
煎本 孝 北海道大学, 文学部, 教授 (50124227)
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研究分担者 |
全 福 内蒙古大学, 蒙語系, 教授
ダニエル エフレーモフ ロシア連邦サハ共和国, 自然保護省, 研究調査員
アレクサンダー バダイェ カムチャッカ国立教育大学, 副学長
池谷 和信 国立民族学博物館, 民族社会研究部, 助教授 (10211723)
山田 孝子 京都大学, 総合人間学部, 助教授 (20293839)
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キーワード | モンゴル / ヤクート / コリヤーク / 牧畜文化 / 世界観 / 儀礼 / 文化的アイデンティティ / 文化復興運動 |
研究概要 |
本年度は前年度までに収集した現地調査資料の整理と分析を進めた。同時に、研究代表者(煎本孝)は、7-8月にウイリアム・マリー大学(アメリカ合衆国)において東北アジア諸民族(コリャーク、ヤクート、モンゴル等)の生態と世界観に関する文化人類学的情報資料の収集、調査研究を実施した。 これらの資料に基づき、東北アジアにおける北方諸民族の生態と世界観との動態的関係を整理、分析した。その結果、北方森林帯で馬、牛を飼育するサハ共和国のヤクート、北方草原帯で馬、羊、山羊、牛の遊牧を行う内蒙古自治区のモンゴル、北方ツンドラ地帯でトナカイ遊牧を行うロシア連邦共和国カムチャッカ北部のコリャークというように、東北アジア北方諸文化は自然環境を異にし、牧畜形態も異なるにもかかわらず、共通するシャマニズム的世界観、儀礼の存在が認められた。 さらに、このシャマニズム的世界観を中心に、伝統的儀礼の復興が各地で図られ、それが文化的アイデンティティの形成と深く結びついていることが明らかにされた。ヤクートにおいては、最も重要な儀礼であるウセフ(夏至祭)の復興、実施がシャマニズムの復興とともにヤクートの生態と世界観の象徴として文化復興の中核をなし、さらには民族のアイデンティティの基盤ともなっていた。また、コリャークにおいてはシャマニズム的世界観に基づく冬期の狩猟儀礼であるホロロ祭を中心に、伝統文化の継続と再生産が図られていた。さらに、内蒙古においては、治療を目的とする歌と舞踊からなるシャマニズムの実践が見られ、それがモンゴルの世界観とアイデンティティの再生産に深くかかわっていることを指摘することができた。
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