研究課題
H8.4.24〜H8.5.26の事前調査とH8.11.1〜H8.12.17の本調査は、ペンジンスキー地区とエッソ地区で実施された。ペンジンスキ地区におけるコリヤク芸能調査では、予定されていた7調査地のうち、アヤンカとタフロフスカの未調査であるが、残りの5調査地、即ちカメンスコイェ、マニリ、バレン、オクラン、スラウトノイェで、当初の目的である漁撈・狩猟儀礼に関わる歌と踊りの録音・録画及びジェリッフ調査隊のヨヘルソン蝋管資料を使った聞き取り調査を実施した。本調査の後半で、岸上がエッソ地区において、コリヤク芸能と近隣民族のエウェン民族芸能の影響関係を調査した。ペンジンスキー地区においては、クマ狩猟に遭遇した幸運もあって、極めて資料の少ないクマ儀礼関連の歌を録音・録画した。また、ジョサップ調査隊における録音の聞き取り調査では、20世紀初頭の蝋管中の音楽が当地のものであったため、歌の演者の子孫が祖父の歌であることを同定するなどの成果が得られた。海岸コリヤクとトナカイ・コリヤクの同居する村において、歌と踊りが両グループを区別する指標の役割を果たしているのではないかなどの新しい課題を得た。ペンジンスキ地区のペンジン川上流部で地域の中心地(カメンスコイエ)から遠い村、たとえば、スラウトノイェなどは、これまでに外国人が入ったことはなく、また90歳前後の情報提供者がおり、トナカイ儀礼の歌と踊り及び犬犠牲儀礼に関して貴重な新情報が得られた。さらに、コリヤク芸能の中心的機能を持つ楽器である太鼓の作成儀礼がトナカイ狩猟と深い関係にあることがわかった。また、H8.11.11〜11.26.のヤク-ツク地区調査において谷本は、かねて連絡を取り合っていたノボシビリスク在住の民族音楽研究者のシエィキン(Y.Sheikin)氏を転居先のサハ共和国の首都ヤク-ツクに訪れ、コリヤク芸能と他民族芸能との歴史的影響関係を研究すべく、サハ共和国内のヤク-ト、ユカギ-ル、エウェン、エウェン諸民族芸能に関する調査の可能性を討議した。
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