研究課題/領域番号 |
08041004
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
常木 晃 筑波大学, 歴史・人類学系, 助教授 (70192648)
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研究分担者 |
ハイダール ジャマル ラタキア国立博物館, 館長
中村 徹 筑波大学, 農林学系, 助教授 (60015881)
赤羽 貞幸 信州大学, 教育学部, 助教授 (40089090)
三宅 裕 筑波大学, 歴史・人類学系, 講師 (60261749)
岩崎 卓也 東京家政学院大学, 人文学部, 教授 (30015383)
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キーワード | テル・エル・ケルク / シリア / 新石器時代 / 集落システム / セトゥルメント・パターン / 都市化 / 封泥 / ビーズ生産 |
研究概要 |
本研究の目的は、西アジアの農耕牧畜経済の開始にともなう集落の急速な拡大化現象と、社会の組織化複雑化の過程について、北西シリアのエル・ルージュ盆地をフィールドとして、遺跡発掘と環境科学的調査を通じて具体的に解明することにある。 平成10年度は、テル・エル・ケルク遺跡北部テル・アイン・エル・ケルクの中央発掘区と北西発掘区を中心に発掘調査を実施し、新石器時代の良好な遺構および、集落経営にかかわる遺物群などを発見した。 中央発掘区ではエル・ルージュ2c期(紀元前6千年紀半ば)の文化層より、大形の貯蔵用倉庫3軒と小型の住居3軒を検出した。貯蔵用倉庫は多数の小さな方形の部屋で構成され、貯蔵用のビンや土器、炭化コムギ、動物骨などが発見された。いずれも焼成を受けており、保存状況は良好である。また居住用と想定される遺構は、礫を敷き詰めた上に美しい石灰プラスターを貼った床を持っている。床下より、幼児埋葬や動物骨をおさめた儀礼用のピットなどが発見されている。これらの遺構から、集落構造を推定する研究が進められた。また、平成9年度同様に石製印章と粘土の封泥が出土し、複雑な経済活動が行われていたことが明確となっている。北西発掘区からは、エル・ルージュ1期および2a期(紀元前7千年紀末〜6千年紀初頭)の文化層が検出され、住居などの一部が発見されている。未完成のビーズ類や石のドリルが多数出土しており、遺跡内でビーズ生産が行われていたことが確かめられた。 環境科学的調査では、集落の消長に深くかかわる盆地中央の古ルージュ湖の時期的変遷を明らかにする資料が得られている。このほか遺跡の数カ所で試掘を行い、遺跡全体に紀元前7千年紀末〜6千年紀前半の集落が広がっていたことが再確認された。調査の結果、テル・エル・ケルク遺跡の新石器時代集落は、巨大であるばかりでなく複雑な社会経済的組織を有していたことが明らかになりつつある。
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