研究概要 |
本研究の目的は、自然生態系との関連で、遊牧生産と「地域」の基礎過程に注目しつつ、モンゴル遊牧社会の変容と将来像を明らかにすることにある。本年度も2班に分かれて調査を実施した。 「ボグド郡」研究班は、平成8・9年度に引きつづき、ボグド郡ツェルゲル村に調査基地を定め、この村と併行してローガル村を調査した。郡役所では、前年度に引きつづき人口・家族構成・家畜群の構造の実態を明らかにする資料を収集することができた。調査項目は、四季の遊牧循環と牧地配分、家畜群の再生産構造、家族経営の分析、遊牧共同体ホタ・アイルとその上位の共同体の動向、ホルショーの可能性、学校教育と地域の問題などであり、「ボグド郡モデル地域構想」策定への基礎研究を進展させることができた。 「考現学」研究班は、前年度に引きつづき、首都ウランバートルの中心的寺院ガンダン寺院・ダンバ・ダルジャー寺院・北部地方のアマルバヤスガラン寺院やカラコルム遺跡のエルデネゾー寺院のほか,ウグシン・ヒート遺跡,ザヤイーン・フレー寺院跡の調査をおこなった。 また,モンゴル西部のバヤン・ウルギー県において,イスラム教の復興状況や,スキタイ,突厥,ウィグル,ナイマン,モンゴルの墓制について調査した。このほか,カザフ人,ウリャンカイ人のゲルを調査し、遊牧社会の変容の諸相を多面的に捉え、モンゴルにおけるラマ教,イスラム教,仏教などの再生と展開に着目して考察することができた。
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