研究分担者 |
西本 豊弘 国立歴史民族博物館, 考古研究部, 助教授 (70145580)
能城 修一 農林水産省, 森林総合研究所, 主任研究官
南木 睦彦 流通科学大学, 商学部, 教授 (80209824)
鈴木 三男 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80111483)
前田 潮 筑波大学, 歴史・人類学系, 助教授 (40015897)
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研究概要 |
サハリンにおける縄文海進期以降の生態系復元および人間と環境とのかかわり史を明らかにするために,(1)植物資源の定性的な解析と植物遺体同定のための比較標本収集・整理,およぴ(2)海岸平野における露頭調査とボーリング調査による層序・編年学的研究を行った。(1)はサハリン南部のオホーツク沿岸域とアニワ湾沿岸域を中心に実施した。(2)は中郡西海岸のクラスノゴルスク地域と南部のバワイ湖岸において実施した。 1.花・果実を付けた植物比較標本は1,000シートに上り,花・花粉・種子・果実の器官解剖学的研究のため部位標本があわせて採取された。これらは東北大学・東京大学・国立歴史民俗博物館に登録保管された。 2.西海岸では,縄文海進期の砂堆列形成の終末期に新石器時代の居住が始まり,砂丘固定後に内陸の湖岸か川岸に沿って続縄文・オホーツク・擦紋・アイヌの各文化期の居住が連続的に展開したことが明らかになった。続縄文以降では砂丘上に森林が拡大しており,居住は内側の砂丘斜面を開発して展開した。オホーツク文化期の住居跡内から得られた炭にはクリが認められ,北海道か本州との資源の交易を示す有力な試料を得た。 3.南部のバワイ湖の南岸において過去12,000年間の連続的な泥炭層を発見した。高精度編年と植物化石の解析から,約12,000年前に氷河的環境から森林へと急変したこと,約10,000年前に気侯の温暖化とともに植物相が著しく豊富となったこと,約5,000年前以降に森林が埋没するような環境の急激な悪化があったこと,約2,000年前以降にさらに森林が衰退するような環境変化があったことがサハリンで初めて明らかになった。
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