研究課題
今年度は、10月末〜11月中旬、1月下旬〜2月上旬の二度に分けて、在欧日本古典籍研究のための派遣を行った。以下、それぞれについて成果を簡単に報告する。【第一次】 ドイツにおいてハイデルベルクのボルトハイム財団民族学博物館、ミュンヘンのバイエルン州立図書館、ベルリンの国立図書館、チェコのカレル大学図書館を訪問した。このうちハイデルベルクでは、平成8年度の訪問以後に見出された資料を閲覧したが、特に絵巻の中に注目すべきものがあった。またミュンヘンとベルリンでは、クラフト博士編『JAPANISCHE HANDSCHRIFTEN UND TRADITIONELLE DRUCKE AUS DER ZEIT VOR1868』に掲載の典籍の中から選んで書誌調査を行った。ミュンヘンの図書館は江戸初期以前の古版本を豊富に蔵するが、そのうち目録で「刊年不明(17世紀初期か)」とされた『三体詩』は、伝存稀な明応版の初刻本であることが判明した。またベルリン国立図書館でも、師宣絵本の新資料が確認された。さらにチェコのプラハにおいて、来年度以降計画中の東欧所在の古典籍調査に向けた予備調査を実施、また現地の日本研究者と面談を行い、日本関係資料の所在等について貴重な情報を得た。【第二次】 ドイツにおいてケルンのプルベラー氏邸、イタリアにおいてジェノアのキヨソーネ東洋美術館、ピザのピザ大学図書館、ローマのサレジオ大学図書館を訪問した。プルベラー氏邸では平成8年度からの継続として、近世の絵本類を中心に調査を行った。キヨソーネ美術館では、昨年度訪問の際抄写したコーニッキ博士作成の目録に基づいて主に絵入り版本を調査したが、目録記載の情報と現物との不一致が問題として残った。ピザ大学では日本古典籍関係の予備調査を行い、サレジオ大学図書館も一昨年度からの継続であり、近世期から明治の草双紙を含む合計約700点の古典籍について、一通リカードの採取を終了した。引続き国内所在資料と対照の上で、目録化を準備中である。
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