研究分担者 |
堀 賀貴 山口大学, 工学部, 講師 (20294655)
坂井 聰 (財)古代学協会, 古代学研究所, 助教授 (20215586)
丹羽 祐一 香川大学, 経済学部, 教授 (50140471)
横山 卓雄 同志社大学, 理工学研究所, 教授 (10066243)
浅香 正 (財)古代学協会, 古代学研究所, 教授 (70066059)
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研究概要 |
本年度も引き続き,ポンペイ遺跡北部城壁上の日本国調査地区において,発掘調査を遂行した。本年度当初に,監督官庁であるポンペイ考古監督局より,本研究により発掘調査の結果検出した遺構の一部を埋め戻しの要請があり,この作業を監督するため,研究代表者江谷が5月に現地に赴くと共に,この機会にこれまでの調査で出土した遺物の研究および実測等を行った。 ついで,10月から12月にかけて再度現地調査を行った。城壁の建設時期を特定するため,城壁と市街地との間の空間において,城壁構築以前の地層に達する深掘りトレンチを設定し発掘を行った。その結果,城壁構築年代を示す,良好な土器資料が得られた。またこのトレンチの調査から,紀元後79年のポンペイ遺跡埋没までの当該空間の以下のような変遷の過程が明らかになった。すなわち最初期の城壁に伴うものと見られる,城壁を内から支えるための土盛り(Agger)および,それを下支えするためと見られる土塁の建設,続いてこの土塁の改築,続いて昨年度の調査で検出した暗渠敷設工事による改変,さらにその上に暗渠を埋めた土層が堆積し,さらに最終的にはこの空間を道路として利用するための客土が行われたという過程である。これらの知見は,ポンペイの都市起源を解明するのに重要な資料になると考えられる。 また検出された塔の唯一の出入口が,ポンペイ埋没の時点では土で塞がれていたが,この層を断ち割り,出入口が機能していた時代の道路面を明るかにするために,もう一つのトレンチを設定した。発掘の結果,79年当時の地表面の下約1.9mの所で,道路面を検出したが,この面もやはり上述の暗渠埋設工事により,一部が破壊されたことが判明した。 以上の発掘調査と並行して,これまでの調査で出土した土器の調査・研究を行い,その結果城壁が紀元前2世紀に大規模な改築を経験していることが判明した。これら一連の調査の最終報告書を現在準備中である。
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