研究課題
国際学術研究
本研究は、スリランカ、インドネシア、タイ、そして昨年度から台湾を含めた地域における農村開発計画の比較研究を行ってきた。今年度は、昨年に引き続き、スリランカにおける貧困低減のための「ジャナサヴィヤ(人民の力)」計画、タイにおいては開発僧、インドネシアでは海岸部の泥炭湿地水田化計画、および戦後の開発独裁体制下の村落史などを調査した。ところで、これら3年間の調査経験をとおして、開発現象を研究する上での理論的・方法論的問題が明らかになってきた。例えば、開発言説を分析するときには、言説のみならず、それと表裏一体となった制度全体を視野に入れる必要があるという点である。言いかえれば、まず我々の焦点を「地域的な開発の出来事」にあてることである。この「出来事」においては制度、モノ、言説がミクロの権力の網の目を構成しているが、ここに登場する開発関係者(導入者、農民、計画者)がどのような「開発の主体」(または「反開発の主体」)を構築するのかを理解することが重要である。そして、このような「出来事」における権力のネットワークと主体の形成を理解したとき、開発現象のミクロな過程を十全に把握できたといえるのである。しかしながら本研究は、このような段階に達することはできず、その予備的な段階にとどまった。そこで、今後の開発現象の研究にむけて、我々は、主体、行為者、政治経済学といった理論的概念を精緻化するとともに、民族誌的資料の蓄積をはからねばならない。
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