研究課題/領域番号 |
08041050
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
吉野 晃 東京学芸大学, 教育学部・地域研究学科, 助教授 (60230786)
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研究分担者 |
SOMKIAT Cha 山地民研究所, 調査研究部, 研究員
MONGKHOL Ch 山地民研究所, 調査研究部, 副所長
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キーワード | ミエン・ヤオ族 / ヤオ族 / タイ山地民族 / 出稼ぎ / 焼,畑耕作民 / 帰村 |
研究概要 |
本年度の調査は、調査計画全体の中の第二段階にあたる。第二段階の調査では、昨年度の第一段階調査結果に基づいて、出稼ぎ者が多い村と少ない村とをあわせて12ヶ村選定し、各世帯の社会経済的状態と出稼ぎ者の経歴などを聞き取り調査した。12村落の内訳は、チエンラ-イ県3ヶ村、ナーン県3ヶ村、パヤオ県3ヶ村、ランパーン県2か村、カンペンペット県1ヶ村である。また、出稼ぎ者が顕著に多い村6ヶ村と少ない村6ヶ村を選択した。 国内・国外を問わず、出稼ぎの基本的な要因は、農耕の不振あるいは農地の不足であるが、その対応としての出稼ぎ方略は村の置かれた条件によって異なる。特に海外出稼ぎが多いのは、パヤオ県のチエンカム郡・ポン郡地域の村とチエンラ-イ県、ランパーン県の村である。これらの村では、行政機関等外部機関との接触が多いことが観察され、また、社会的地位の向上への指向が強いことが挙げられる。地域的なネットワークによって、その高収入の情報が更なる出稼ぎを誘発する構造となっている。一方、例えばナーン県においては、国内出稼ぎは多い反面、海外出稼ぎは少ない。これは、県内のヤオ族村落で銀細工の副業が普及しており、バンコクで金工として働く途があるという技術的な条件と、蜜柑が換金作物として普及している条件に依っている。このように、出稼ぎの頻度および出稼ぎ地(国内・国外)を規定する要因としては、農地の不足の度合い、換金作物の安定性、技術・教育(学歴)の条件、地域的な情報ネットワーク、村内での社会的地位をめぐる競合などが挙げられる。今のところ、出稼ぎが永住的な移住につながるケースは少なく、出稼ぎ期間の終了後は帰村するパターンが多い。 2月と3月に、関連研究者を招いて研究会を開催した(日本で2回、タイで1回)。研究会では中間報告を行い、参加者から調査に対する批判と他民族における出稼ぎ現象との比較情報を聴取した。批判された問題点および出稼ぎの社会的影響等については、来年度の補充調査で精査する予定である。
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