研究課題/領域番号 |
08041050
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
吉野 晃 東京学芸大学, 教育学部・地域研究学科, 助教授 (60230786)
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研究分担者 |
SOMKIAT Cham 山地民研究所調査研究部, The Tribal Research Institut, 研究員
MONKHOL Chan 山地民研究所調査研究部, The Tribal Research Institut, 副所長
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キーワード | ミエン・ヤオ族(ヤオ族) / 出稼ぎ / タイ山地民族 / 焼畑耕作民 / 社会=文化変容 / 農業外就労 / 農法の変化 / 労働力移動 |
研究概要 |
タイ北部のヤオ族村落12か村を、(1)海外出稼ぎの多い村落、(2)国内出稼ぎの多い村落、(3)出稼ぎ自体が少ない村落に区分して、世帯調査と出稼ぎ経験者に対する聞き取り調査と補充調査を行った。出稼ぎ全般は1990年以降増加したが、この主な要因としては、環境の変化および政府の森林伐採禁止政策による焼畑耕作の不振が送出要因として、当時の東アジア・東南アジアにおける経済好況が誘引要因として作用している。森林伐採制限・農法の変化によって肥料・農薬への資金投入の必要性が増加し、また、核家族化の進行による生産単位の縮小も要因として挙げられる。経済要因以外に出稼ぎを促している要因としては、儀礼・世界観の中の位階制志向と上昇志向と,若年層における知識技能の蓄積志向とが観察される(文化要因)。位階制志向は、現在は家屋新築・果樹園造園による威信の競合として現象している。銀細工等、地域的に特殊な技術伝承があるところでは、その技術を活用した出稼ぎも顕著に見られる(技術要因)。公教育の普及による学歴の上昇は、国内出稼ぎを促す要因として作用している(教育要因)。村落レベルで作用する要因としては、先行出稼ぎ者の存在と、それによって形成される村落内外の情報ネットワークの影響が大きい(情報環境要因)。 海外出稼ぎには地域差があり、パヤオ県とチエンラーイ県とにそれぞれ海外出稼ぎ者頻出地域が認められる。海外出稼ぎを多く出している村落では、経済要因が強くみられると同時に、近隣村落や親族に先行出稼ぎ者が多くおり、地域的情報ネットワークの存在と、村落内外における威信の競合が出稼ぎを促している。海外出稼ぎが少なく国内出稼ぎが多い村落では、寧ろ文化要因と地域によっては技術要因が強く作用している。負の形での教育要因と文化要因は出稼ぎの少ない村落で出稼ぎの抑制要因として作用していると推測される。出稼ぎの社会的影響は、教育投資の増加、女性の地位の変化、村内の威信競合の増大、他民族との通婚の増加が観察された。
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