研究課題/領域番号 |
08041051
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
牟田 博光 東京工業大学, 大学院・社会理工学研究科, 教授 (70090925)
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研究分担者 |
沼野 太郎 国立教育研究所, 国際研究協力部, 主任研究官 (50228277)
渡辺 良 国立教育研究所, 国際研究協力部, 室長 (30141980)
潮木 守一 武蔵野女子大学, 現代社会学部, 教授 学部長 (80022391)
浜野 隆 武蔵野女子大学, 現代社会学部, 講師 (00262288)
齋藤 貴浩 東京工業大学, 大学院・社会理工学研究科, 助手 (50302972)
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キーワード | 高学歴失業 / 教育計画 / 企業内教育 / 職業教育 / 教育援助 / 比較教育 |
研究概要 |
インドネシアでは高等教育機関卒業者の増加は、産業別労働者の学歴構成を大きく変化させた。高学歴者は以前のようには社会的に尊敬される職業につける保証はなくなったが、そのような職業は高学歴者によって占められることになった。しかし、長い教育期間と多額の費用を費やしても、学歴に見合う仕事が必ずしもあるわけではない。完全失業率は1980年代まで低い水準に維持されたが、1990年代に入って、農業部門の就業者が絶対数でも減少傾向を見せると同時に、規制緩和策の進展で製造業、建設業の雇用が上昇した。同時に中東教育水準の労働力が急増する中で、完全失業率が急上昇するに至り、高学歴失業問題が深刻化している。 高等教育は急速に量的拡大をしたが、その質については問題がある。国家開発と社会的ニーズへの不適合、大学問格差とジャワ島ー極集中、教師陣の不足、不十分な国家予算、狭き門、エリート教育意識の残存に起因する高い中退率と留年率などである。現在、教育・人材開発部門で政策の優先順位が最も高いのは基礎教育段階である。これは基本的人権の保障と同時に、次の時代において、近隣諸国との経済競争の中で生き残りをかけた人的基盤整備のためである。しかし、基礎教育を普遍化は10年もたたずにさらなる高等教育の拡大に直結する。 1997年に始まった経済危機とそれに続く政治危機によって、労働力市場は混乱した。1996年には5.4%であった完全失業率は1998年半ばには17.5%まで上昇し、週15時間未満労働者も9.6%から20.0%へと増加した。1997年には12%だった貧困者層は1998年半ばには39.1%となった。学校段階が上がるほど、収入が就学率に与える影響は大きい。言い換えれば、・学校段階が高いほど、就学率の所得弾力性が高い。就学率は大幅に低下した。就学率の低下は労働力を生み出すが、雇用がないため、無職の労働力を増やし、失業率を上昇させる。正式な統計はまだ発表されていないが、高等教育機関の就学率低下は大きいものと考えられる。しかし、社会構造が変わらない限り、経済が回復基調に向かえば、長期的には今後とも、主として私立大学の拡充によって、インドネシアの若い大卒労働力は労働市場に急速にその参加人数を増加させ、大卒を初めとした高学歴取得者の就職難は解消しないと思われる。
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