研究課題
(1)平成8年度として以下の調査研究を実施した。7月にソウル市、9月にソウル市、釜山市、大田市、11月に釜山市、大田市で、小・中・高・大学生や企業で働く青年あるいは教育・マスコミ関係者、日本大衆文化関連業者への聞き取り調査と関係資料収集を実施。この調査をふまえ質問紙調査のための調査内容を検討し、11月末に調査票を作成。12月初旬にソウル市、釜山市、大田市、春川市の各市で、小・中・高校生、合計2254名への質問紙調査を実施。他方、同様の日程で、家庭や地域社会での生活様式の変化に関する聞き取り調査を実施。また、小・中・高等学校を訪問し、授業過程と学校行事の調査を実施。さらに、教科書ならびに第7次教育課程に関する資料を収集・分析(2)以上の調査実施をふまえ以下の新たな知見が得られた現代日本の大衆文化の青少年への浸透は、ソウルのみでなく韓国全土に確実に拡大する一方で、従来のような反日意識を伴う非難の減少を確認。その理由として、社会意識的にはOECD加盟に象徴される経済力や政治力への自信、社会構造的には新中間層の定着と日本文化に違和感のない若者(新世代からX世代へ)の増加があげられる。だが、マスコミ、教育制度、生活慣習等に内在する反日意識を再生産する社会構造は世代差を越えて日本批判を顕在化させる装置として今なお機能し、特にソウル以外で強固なことも確認できた。また、経済成長に伴う急激な都市への人口移動、生活様式の都市化、核家族化、高学歴化、少子化の進行が日本文化受容の社会的基盤になる-方で、日本と同様の問題を伴って子どもの生活構造を改編しているが、都市中間層の家族文化に伝統文化が継承され、一種の安定した状況が生み出されていることも確認した。だが、これが一過性のものかどうかも含め、今後の推移については継続調査が必要である。
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