研究課題
国際学術研究
本国際学術研究は、タイ民商法典を主たる検討素材とし、同法典と日本民法典との関係を比較法的に考察することを具体的焦点とする継続的研究の一環として手掛けられ、本年度がその最終年度であった。 本年度の研究にあっては、両法典の比較法的検討の領域を家族法分野にも及ぼした昨年度以来の新展開をより具体化しつつ、進んでは広く、タイ法の総体と日本法の総体との比較検討という課題にも発展させながら、タイ民商法典と日本民法典とのより実証的な比較法学研究を一層推進した。 タイからの民法研究者の招聘、タイへの研究者の派遣等を通じた、相互のより濃密な研究交流の蓄積からは、単なる文献渉猟による情報収集を越えた研究成果として、大略、次のような新たな知見を得ることができた。 1[タイ民商法典の編纂過程].法典編纂委員会の議事録等の原資料もさらに入手し得たほか、編纂事情に関する新たな情報源が確定できた。 2[タイ民商法典の具体的内容].財産法の領域のみならず、家族法分野に関しても、ドイツ法・フランス法・スイス法等の影響のほか、日本民法の影響が看取される。比較法的検討の対象は、親族法・相続法にも及ぶべきことが確定された。 3[タイ民商法典の法適用・法実践].タイ民商法典・日本民法典の双方が同一文で規定する法制度(たとえば、危険負担制度、第三者のためにする契約など)が、必ずしも同様の法解釈により運用されていない実態を確認し得た。法比較が法実践の比較に及ぶべきことが確定される。 4[日タイ比較法研究].国際シンポジウム(於:タマサート大学)での直接的知見をも通じ、タイ民商法典と日本民法典との比較法研究は、タイ法の総体と日本法の総体との比較という、より大きな研究課題と接合すべきことが確定できた。 5[アジア法への展望].本国際学術研究の発展形が、「アジア社会における西欧法の位置」を中核に据えるアジア法研究へと向かうべきことが確定された。
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