研究概要 |
本年の研究課題は「台湾統治下の同化政策と沖縄の歴史体験」であるが,このテーマに沿って本年の調査は7月30日から8月27日まで,台北・基隆において文献調査,資料収集,関係者とのインタビューを実施した。この間に収集した関係文献および資料はおよそ1000点に達し,その大半はすでに整理され,有効に活用できる段階にある。インタビューについては現在整理中であり,今後文献資料とともに本研究に有益な示唆をもたらすものとなろう。本年の研究によって得られた新たな知見は少なくない。 1調査研究で収集された膨大な文献資料の解読をとおして,台湾統治下の同化政策の実態がこれまでの研究以上に明らかになったこと。これまでの研究は主要に上からの統治政策に限定される傾向があり,本研究ではむしろ被害者たる台湾側の同化政策への対応を解明することにより,同化政策の実態解明へと迫った。 2思想・文学・地理・歴史・言語などの各分野にわたる同化政策の実態分析が可能となり,各分野の相互の関連が解明されようとしている。とりわけ,この分野ではこれまで全く使用されなかった小中学校教材分析,原資料を使用し,相互間の関連分析に重点を置いた。 3台北市・基隆市などの一般市民・官吏等との聞き取り調査を通して,日本統治時代の台湾における沖縄県出身者の地位と役割が明らかになり,同化政策との関連性が一層明らかになりつつある。 なお,次年度の課題として以下の2点が上げられる。 日本統治下の台湾における同化政策の諸相を解明し,沖縄の同化政策との関連を追及する目的でなされた国立中央図書館での文献資料の調査収集は順調に進んだが,台湾大学附属図書館・同研究所図書館における調査収集は引き続き進めなければならない。 2台北市・基隆市における官吏・軍人・一般市民等の体験の聞き取り調査も時間的な制約等からまだ予定の半分程度に留まっており,早急に取り組む必要がある。
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