研究課題
本年度は、(1)これまでの交番実態調査の補充として、アメリカ・サウスカロライナ州コロンビア市に対する調査を行った。(2)同ワシントン特別区における研究集会に出席し、とくに地域安全活動の専門家と会合し、資料を収集した。(3)この3年間の各国(イギリス、ドイツ、シンガポール、アメリカ)の状況を各担当者が総括し、討論を行った。それによると、コロンビア市における交番活動は、犯罪がきわめて深刻な状況にあった1990年代初頭に米アイゼンハワー財団からの資金援助を受け、他の主要都市とともに、交番制度が導入された。この制度は、警察官ではない民間人をスタッフに登用した、いわば犯罪多発地域における児童健全育成をめざした学童保育活動に近い。犯罪・非行予備軍である児童に対する道徳教育を徹底させるねらいがあり、昼間放課後に各種の活動を行っている。わが国と同じ「交番(KOBAN)」という言葉を使いながら、内容的には相当の違いがみられた。また、アメリカは全般的に好調な景気と青少年人口の減少に伴い犯罪が減少して安全な地域活動が評価されているが、いぜん特定の貧困地区では犯罪問題は深刻であり、交番制度をさらに採用する地区が増加することが予想される。この3年間調査の総括としては、地域安全を増進するための装置として、わが国の交番制度に対して政策担当者から一定の評価を受けているが、しかし、住民の反応としては、歓迎する傾向と歓迎しない傾向の双方がみられたこと(監視対象の観点)、わが国の交番(派出所、駐在所)は全国津々浦々に所在するが、欧米では、一般的に犯罪多発地域に設置される傾向にあることが看取された(コスト・ベネフィットの観点)。
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