研究課題
本年度の主要目的は、国際比較の対象とするタンザニアとジンバブエ、及び地域間比較の対象とする各調査地の全体状況を把握するとともに、分析枠組みの確立とその共有にあった。本年度は、研究分担者をそれぞれのフィールド調査に重点を置き、国内での研究会を実施するまでに至っていない。後者の課題は今後継続的に討議していく予定である。タンザニア・イリンガ周辺の調査は3月14日現在も継続中であり、その成果は次年度に報告する。モロゴロ周辺では、サガラ社会に対する予備的調査を実施した。ここの現金獲得はもっぱらとうもろこしの商品化に依存しており、その生産規模による差異化とキバルア(農業労働者)の発生が認められる。このキバルア現象は富者による貧者への現金提供を意味し、ここにみられるモラル・エコノミーが社会再編のサガラ的特質を生んでいると考えられる。ジンバブエでは、アフリカ人の大商業農民と小農民の調査を実施した。90年代に入って、大農場経営技術を体得した「篤農家」が現れ、新しい黒人農場主の誕生というダイナミックな展開がみられる。他方には、上向展開できない圧倒的多数の小農民がコミュナル・ランドに集住している。シャンバ周辺の小農民は綿花ととうもろこしを主体とする農業を営んでいるが、ここの社会は、「過小生産」や貧困の共有といった伝統的アフリカ農民社会の特質が認められない。むしろ、個別化が進み、近代主義的な「除草する農民」の社会として把握できる。そのことは、アフリカ農民概念の再検討を迫ってくる。なお、シャンバ周辺の調査は、97年5月のアフリカ学会大会において口頭発表する予定である。
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