研究概要 |
(40字×20行) 平成8年度は3年計画の初年度として,カメルーン国において,広域調査によって適切な調査地の選定をした。寺嶋と山本(研究協力者)及び分藤(研究協力者)は,カメルーン南部のジャー川流域(ロミエ,ンゴイラ地区)において,また市川と亀井(研究協力者)はブンバ川流域(ヨカドマ,モロンド地区)の森林地帯において,複数の村落を対象として自然環境,森林資源,生業,民族間関係,村落構造などの基礎的なデータの収集に重点をおいた調査をおこなった。また,森林植物の認知と利用についての民族植物学的調査と,マーケット調査によって地域経済における森林資源の利用可能性に関する基礎データを収集した。今回の調査で,カメルーン南部における諸民族間の関係としては,これまで知られているものと共通するものがある一方,かなり性格を異にしているものもすくなくないことが判明した。とくに定住化した狩猟採集民バカと周辺の農耕民との関係は他にみられないものである。森林における民族接触のエスノヒストリーや森林住民の自然適応と多民族共存の構造を探る上で重要な資料となる。またカメルーン南部は南接するコンゴ共和国との間で,頻繁な人的交流と物流があり,農耕諸民族とバカ・ピグミーたちを含む緊密な地域経済を形成しているようすが明らかとなった。 調査地であるブンバ川やジャー川流域では多くの伐採道路が建設され,大規模な伐採が計画されたり実施され,長年森に育まれてきた森の民の森林文化も危機に瀕していることが判明した。その自然環境と森の民の生活実態に関して,さらに早急に調査する必要があることを痛感した。 木村および澤田はこれまで得られた森林地帯の環境認識や生業形態,音声コミュニケーション,シンボリズムなどに関するデータの整理と考察をおこなった。
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