【研究の目的】本研究では、異文化間の世代間関係を把握することを目的として、農村社会における嫁不足を構造的に把握するとともにアジア系外国人妻を対象とした老親扶養の意識・実態を探ることにした。 【対象と方法】調査対象地は、山形県最上地方の8市町村と新潟県中魚沼地方・東頸城地方の7町村、調査対象者は、その地域に居住している農村青年と結婚した中国、韓国、フィリピン出身のアジア系外国人妻227人である。調査方法は、母国語による郵送調査と配票調査を併用した。さらには、質的な調査として大量調査のなかから中国、韓国、フィリピンの対象者を各々数名ずつ抽出し、生活状況についてのケーススタディをおこなった。大量調査に基づく分析方法は、独立変数として、出身国、年齢、続柄、学歴、結婚年齢、家族形態、居住形態、介護経験の有無などの項目を設定した。また、従属変数として、仮定に基づく介護・被介護についての希望、老後の生活についてのあり方、在宅サービスの利用意向、老親に対する扶養のあり方、扶養に関わる子どもへの期待、家族意識などの項目を設定した。 【結果と考察】アジア系外国人妻の有効回答数は、中国人30(うち、台湾人1を含む)、韓国人64、フィリピン人44、合計138人(有効回収率59.9%)である。結婚年齢を出身国別でみると、中国出身者は30代前半、韓国出身者は30代前半から後半、フィリピン出身者は20代前半が多い。婚姻歴については、初婚・再婚別でみると、韓国、中国出身者に再婚率が高く、フィリピン出身者は皆無である。日本人の老親に対する扶養意識(精神的な支え、経済的な援助、身体的な世話の3項目)に関しては、いずれの項目においても中国、フィリピン出身者が韓国出身者と比較して扶養意識の高い傾向がみられた。
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