研究課題
国際学術研究
本研究は、ライフコース・アプローチにより、女性の開発参加を阻んでいる社会的・慣習的要因、「開発と女性」プロジェクトがもたらす女性・男性および地域への影響等について、ジェンダー分析を行うとともに、女性が男性と同等の開発の担い手として社会的、政治的、経済的状況の変革に主体的に関わりながら自立する力をつける(エンパワーメント)方策を明らかにすることを目ざした。平成8年度は、ジェンダー分析の枠組(案)を作成し、これにもとづいて作成した質問票を用いて、タイ、ネパール両国における現地調査(パイロット調査)をそれぞれ約2週間にわたって実施した。調査は、タイ、ネパールともに以下について実施した。1開発と女性に関する中央政府関係機関・国際援助機関等の担当者へのヒアリング調査、2地方行政機関等の開発関連活動担当者・NGOリーダー等へのヒアリング調査、3住民女性への質問票に基づくインタビュー調査、4開発と女性に関する資料収集。調査終了後、調査報告および研究討議のために、タイ調査班、ネパール調査班が一同に会して会議を開催した。ここでは、住民女性インタビュー調査の集計結果(単純集計・クロス集計)が報告され、コ-ホ-ト間比較の結果、回答者の年齢と以下の項目との間に有意な相関がみられた。初婚年齢、農作業開始年齢、プロジェクトに関する相談相手、日常的な相談相手、団体所属、重要な人物。また、研究分担者等によるヒアリングおよび住民女性インタビューに関する報告がなされ、女性のエンパワーメントに影響を与える諸要因についての研究討議を行い、ジェンダー分析の枠組の一部に修正を施した。この枠組の精緻化および開発における女性のエンパワーメントのための具体的方策の構築は今後の課題であり、次年度は、今年度の調査を基礎に、タイ、ネパールにおける本調査を実施する予定である。