研究課題
野外調査を、沿海州カバレロバ付近とその北東の日本海沿岸地域で行ない、約60個の岩石試料を年代測定・古地磁気方位測定・岩石学的検討のため採取した。1.野外調査の結果、次のことが分かった。(1)白亜紀から古第三紀の火山岩類は下位からキシン層群、シヤノフ層群、ボゴボル層群に分けられているが、キシン層群は主に大規模火砕流堆積物、シヤノフ層群およびボゴポル層群はカルデラ中に堆積した火砕流堆積物および溶岩流から構成されている。(2)花岡岩群はシヤノフ層群とボゴポル層群の間の時期とボゴポル層群堆積後の少なくとも2つの時期に導入した。(3)古第三紀末〜中新世初頭の淡水成堆積物が点々と存在している。その堆積盆はグラーベン状をなし、これら堆積時にこの地域は伸長場におかれたことを示唆する。これは日本海拡大直前の状態を反映しているものと考えられる。2.試料の到着が12月末であったため、岩石記載・年代測定・古地磁気方位測定などはまだ始まったばかりであるが、これまでに次のことが判明している。(1)火山岩類の鉱物分離を終えた全ての試料からジルコンが得られ、フィッション・トラック年代の測定が可能である。(2)カバレロバ付近のキシン群層の火山岩のフィッション・トラック年代は70Maから80Maを示し、白亜紀後期にものであることが確認できた。(3)キシン層群の古地磁気方位の偏角はカバレロバ付近と北東部で大きく異なっており、白亜紀後期以降、この地域が変形運動を被った可能性を示唆する。しかし、伏角は50〜60度と現在の地磁気方位と一致しており、白亜紀後期以降、南北方向への移動は少なかったものと考えられる。