研究課題
国際学術研究
ロシア・沿岸州と日本列島の白亜紀以降の比較を行い、日本海-日本列島系の形成過程の詳細と、日本海形成以前の東アジアの復原を目的に、シホテアリン山地中・北部の白亜紀〜古第三紀火成岩類の野外調査を行った。あわせて、放射年代測定用・古地磁気方位測定用・岩石学的検討用の火山岩試料を約45地点で、放射年代測定用・岩石学的検討用の深成岩試料を約20地点採取した。放射年代の測定はフィッショントラック法で進めており、現在までに火成岩類41試料から分離したジルコンとアパタイトについて年代値を得ることができた。その結果、白亜紀と考えられていた火山岩類の大部分が古第三紀の年代を示した。この結果は、以前に報告した黒雲母のK-Ar年代と一致し、この火成活動の時期が従来の推定よりも新しくなる可能性が出てきた。同時期の火山岩類が日本列島の日本海側にもみられ、日本海が形成される前は、一つの火山帯を形成していたものと考えられる。古地磁気学的検討により、火山岩類の内、新期(古第三紀)の熔結凝灰岩類類の古地磁気方位が、ユーラシア東部の地塊群の古第三紀のそれと一致し、東北日本のそれと大きく異なるていることが分かった。このことは、東北日本が時計回り回転運動をして沿海州から離れて、日本海が形成されたという我々のモデルに調和し、また、ユーラシア東部が古第三紀以来一つのブロックとして振る舞っており、日本海の拡大時にも変形しなかったことを示す。古期(白亜紀〜古第三紀)の火山岩類の古地磁気方位は地域により異なり、古期の火山岩類が噴出・堆積した後、新期の火山岩が堆積するまでの間に、径約60Kmのブロックごとに差別的な回転運動をした可能性があることが分かった。