研究課題
本年度は中華人民共和国河北省・甘粛省およびネパールにおいてジャガイモ疫病菌の採集を行なった。中華人民共和国においては地上部茎葉に顕著な病徴が認められた例が多く、採集した罹病葉をRye B培地に置床ずることによって高率に疫病菌遊走子のうが形成された。この遊走子のうをRye A培地に移植することによって93株の疫病菌を純粋分離株として得ることができた。ネパールにおいては圃場での病害の伸展が予想外に早く、地上部から菌を分離することは困難であったので罹病塊茎を分離源として用いた。罹病葉の場合とほぼ同様の方法によって50株の純粋分離株を得た。分離菌株の交配型について検討したところ、中国株93株のうちA1交配型が92株、A2交配型が1株であった。中国河北省・甘粛省の圃場においては予想通りA1交配型菌が優占しているという結果であったが、同じ圃場にA1交配型菌とA2交配型菌が共存している例が1つだけ見出された。ネパール株ではA1交配型が47株、A2交配型が3株であった。ネパールでもA1交配型が優占していることが示されたが、中国の場合と同様に同じ圃場にA1交配型菌とA2交配型菌が共存している例が見出された。このような例は稀なことであり、きわめて興味深い点である。現在これらの菌株の遺伝子型の分析を目的としてアイソザイム分析を行なっている。次年度の中国黒龍江省・雲南省における採集菌株の結果と合わせて、アジア諸国におけるジャガイモ疫病菌の伝播について包括的な知見が得られることが期待できる。