研究概要 |
タイレリアのうち病原性の比較的弱いT.sergenti/buffeli/orientalis群の原虫はアジア、豪州およびヨーロッパと広く分布している。日本のT.sergentiとそれら外国、特に環太平洋地域に分布している原虫との分類学的関連については不明であった。そこで一昨年、昨年と2年にわたり豪州、アメリカ、中国、タイ、台湾などより現地の研究者の協力のもとに原虫を採集し、解析した。解析の方法は原虫の主要表面抗原(p32)遺伝子型よりC,I,B-1,B-2型に分けられそれらに特異的なプライマーを設定しPCR法で増幅し、型別を行った。今年度は特にイタリア、タイ、中国の分離株について解析した。その結果、これまでイタリアの原虫はT.orientalisと言われていたが、この原虫にはC型とB-1型の原虫が混在しており豪州の分離株と全く同一であった。タイの分離株にはC型、B-1型以外に、我々がT.sergenti/buffeli/orientalis増幅用に用意したプライマリ-では増幅できない原虫が含まれていた。そこでこれら原虫の主要表面抗原遺伝子の塩基配列より特別なプライマーを設定し、PCRを実施した。その結果このタイの分離株にはC型、B-1型とは異なる未分類のTheileria sp.が含まれていた。このTheileria sp.と類似の原虫はタイ以外に中国、米国の分離株からも検出された。これらの成績は3つの論文として公表し、他の1つは投稿中である。
|