研究課題
国際学術研究
本研究ではコンソ遺跡群における古人類学的野外調査とその地質学資料・データの分析・解析、古生物・古人類標本の系統分類ならびに形態解析、先史考古標本の分類・解析を進め、さらにはウィエト地区の野外調査ならびに標本分析、エチオピア産古人類標本の形態学的研究を行った。本研究では中でもコンソ遺跡群に関する研究に重点を置き、以下の成果を得た。地質調査ではコンソ遺跡群全域の層序・年代の枠組みを確立し、特に中心地区については詳細にわたって層序・年代・堆積環境を明らかにした。古生物調査では3000以上の同定可能哺乳動物化石を採集し、全哺乳動物標本の整理・同定を高水準で遂行した。この結果、コンソ遺跡群の動物相は特異なものであり、約190万年前の既存の他の東アフリカのものとは種構成などで異なることが判明した。また、約140万年前の動物相は近隣のトゥルカナ湖周辺の同時代のものと異なり、むしろタンザニアのオルドヴァイ渓谷のものと類似することが分かった。初期人類化石は約140万年前のものが7点発見・発掘された。このうち、本研究では特にボイセイ猿人標本の比較形態学的研究を進めた。その結果、同種内において独特な形態特徴を持つことが判明し、初期人類の種内・種間変異に関する新たな視点を得た。先史考古調査は、石器文化の時代的変遷に照準を当て遂行した。その結果、コンソでは約170万年前にアシュール型石器文化がその初元期段階で出現し、以後、初期アシュール型文化期を経、最上層位の典型的なアシュール型石器の出現に至ることが確認された。最下層の石器はアシュール型として報告されている世界最古のものであり、極めて原始的な様相を持つ。一方、最上層位の年代は今後確定する必要があるが、目下100から130万年前ごろと推定できる。コンソ遺跡群においてアシュール文化の起源とその展開について世界最新の基準を構築する見通しが得られた。
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