研究分担者 |
青山 潤 東京大学, 海洋研究所, 学振 特別研究員
大竹 二雄 三重大学, 生物資源学部, 助教授 (20160525)
小川 和夫 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (20092174)
西田 睦 福井県立大学, 生物資源学部, 教授 (90136896)
金子 豊二 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (70221190)
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研究概要 |
三年間で計12ケ国,延540日間の海外学術調査を行い,15種782個体のウナギ属魚類の標本を得た。これを解析し,以下の成果を得た。 1.適応機構:(1)生理学的特性:Anguilla japonicaについて浸透圧調節機能に深く係わる塩類細胞を免疫組織化学的手法により検出した。淡水生活期には二次鰓弁上の塩類細胞が活性化するが,降河回遊に伴ってこれは退縮し,逆に海洋生活期に必須の一次鰓弁上の塩類細胞が活性化することがわかった。(2)回遊生態:スラウェシ島のポイガル川河口において熱帯ウナギの接岸・遡河生態を調べた所,A.celebesensis,A.marmorataおよびA.bicolor pacificaの3種が出現し,前二者の遡河盛期は6月で,ほぼ周年にわたり接岸することがわかった。またA.bicolor pacificaは量的に少なく,1,3,4,10,12月に出現することが明らかになった。一方,南半球の温帯種としてニュージーランドのA.australis schmidtiとA.dieffenbachiの耳石日周輪とSr/Ca比を調べ,スラウェシ島の熱帯3種と比較した。前者はそれぞれ平均204日と248日で変態を開始するに対し,熱帯種は90〜160日と若齢で変態し,熱帯ウナギに対して温帯ウナギの初期生活史は遅延されているものと考えられた。2.類縁系統関係;(1)分子系統関係:世界中のウナギ属魚類全18種・亜種を採集して,そのミトコンドリアDNA塩基配列データによる分子系統解析を行ったところ,ボルネオ島にのみ分布する熱帯ウナギA.borneensisが最も古い系統であり,ウナギ属魚類は白亜紀に熱帯で起源したことが示された。(2)寄生虫学的検討:オーストラリアの7地点で採集したA.australisとA.reinhardtiの寄生虫検査によって,鰓寄生の単生虫Pseudodactylogyrusの2新種を見出した。ウナギの祖先型に寄生していた単生虫がそれぞれの地域で宿主と共に進化したものと考えられた。
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