研究課題
本年度の研究計画の最大の目標は、クック諸島のマンガイア島で先史学や生態人類学に関連した現地調査を実施して、古人骨等の原資料を可能なかぎり収集するとともに、伝統的な漁労活動などに関する情報を収集すること、そしてラロトンガ島やオーストラリアの各地で生体学的な調査を実施し、市街地や移住地のポリネシア人について、生体計測や生理的データおよび血液サンプルを集めることであった。先史学関係では、ワイロロガ埋葬遺跡を発掘調査して、合計6人分の完全骨格資料と安定同位体分析用の散骨資料を収集できた。これら資料は現在、片山や南川の研究室で分析中である。まだ詳細な結果は出ていないが、ヨーロッパ文化と接触をはじめる直前のポリネシア人の身体特徴を解明するのに必要な各種のデータが得られつつある。生態人類学関係では、中部ポリネシアの伝統的な漁労活動を記載するに十分な漁労技術、漁労経済、漁労文化、そして漁労対象魚類相などについてのデータを収集することができた。これらのデータは現在、竹川が分析中であり、その研究成果の一部は、すでに予備論文としてまとめられた。生体学的な調査では、ラロトンガ島で成人424人、そしてメルボーン市で成人52人について、身長、体重、体表面積、肥厚などの生体計測データ、血圧、血糖値、尿酸値などの生理学的データ、血痕サンプルを採集するとともに、3日間の食事内容のアンケート資料を得た。これらデータ類は現在、ウリジャチェクの研究室で分析中である。まだ途についたばかりだが、高血圧症や糖尿病の者が異常に多いこと、いずれも女性のほうが発病しやすいこと、すでに20歳代で発症する女性が少なくないこと、両症ともに肥満との相関が高いことなどの注目すべき研究成果が、すでに得られた。血痕サンプルについてはDNA分析も行う。その他、マンガイア語の辞書作成作業が相当進んできた。
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